車高を下げるってことは。。。( '03.03.06 up )  (03.10写真追加&用語校正) 

これも見てネ♪ 「車高をさげるってことは(その2) クリオカップカーの場合 (2005.08.18.アップ) 」


愛車のモディファイをしようかな〜と思い立った時、「さてどこをどういじろう?」と多くの人はまずそこから考え始めると思います。
その多くの人は「どうせいじるなら変化のはっきりわかるもの、とか、外から見てすぐわかるもの」などの優先順位でどこをいじるか決めるケースが多いのではないでしょうか。
また、ショップなどの広告ページを参考にされる方も多いでしょう。
で、その結果、見事第一候補に挙げられるケースが多いのが「足回りのモディファイ」。
最近の傾向・一般的な流れとしては「ダウンサス装着」。よーするに車高を下げるというヤツでございます。
車高が下がってると一目見ただけでかっこいいし速そうに見えますもんね。

ワタシも今までいろいろいじってきましたが、車高を下げたことは1度だけ。しかも単に下げただけでなく下げたことによる弊害を無くすためのアイテムが用意されていた車種だったので下げることを決意したのであります。
(ノーマル車高の強化スプリングやダンパー(ショックアブソーバー)の交換などは過去何度もやってますが)

「んん?車高下げたら何か不都合が起こるの?」「車高下げてもアライメントさえキチンととれば問題ないんじゃ?」という声が聞こえてきます。
そう、実際ダウンサスを組もうかなあと思いショップに行って商談する際にはそういう答えが帰ってくることが多いと思います。
「アライメントさえキチンととっておけば大丈夫」って。
(私もそれが本業ならば儲け優先でそう答えるでしょうし。実際ダウンスプリングってのは最近よく売れているようですね。
いろいろなメーカーのラインナップを見てもノーマル車高の強化スプリングやノーマルスプリング対応の強化ダンパーがラインナップから消えてしまってるケースも非常に多いです。売れるものが正しいという理論が成り立っている今のご時世…。)


でもでも。それは静止状態でのことであって、車というものは走ればサスペンションが動きます。
車高を下げるということは動的状態のアライメント変化もオリジナルの車高の時とは違ってくるのです。
このあたりがやっかいなので、私は極力オリジナルの車高でダンパーやスプリングを自分の好みのものに変更するというモディファイをするようにしてきていたのでありまする。


さて、前置きが長くなりましたが(いつものごとく・(笑))ワタシがいったい何を問題視していてノーマル車高を基本としているかについて書いていきます。

その気になる部分と言うのはフロントサスペンションです。
フロントサスペンションには当然のことながら舵取り装置がついております。
ステアリングタイロッドと呼ばれる部品がアップライト(ハブ・ブレーキユニットなどがついててステアリングを切ると左右に回転運動をする部分)に接続されています。
わかりやすいように、車の初期設定時にはこのステアリングタイロッドは地面に水平な状態でステアリングギアボックスからタイロッドエンドに伸びているとして解説していきます。<右図参照>

『注』 以下にあげた現象の事例はタイロッドがアップライト後ろ側に接続されている車両を例にしていますのでその旨ご理解の上お読みください。

従ってこの様な基本セッティングの車が走行中サスペンションに応力を受けた場合には以下のような現象が起きます。

●(仮に。)右コーナーリング時、左にロールした場合 →左側のサスペンションが縮む。右側は伸びる。
右のタイロッド=引っ張られる=トーアウト傾向 (イン側)
左のタイロッド=引っ張られる=トーアウト傾向 (アウト側)

●直進時、ギャップなどで車体が沈み込んだ場合 →両側のサスペンションが縮む。
右のタイロッド=引っ張られる=トーアウト傾向 
左のタイロッド=引っ張られる=トーアウト傾向

●直進時、バンプした直後など車体が浮き上がった場合 →両側のサスペンションが伸びる。
右のタイロッド=引っ張られる=トーアウト傾向 
左のタイロッド=引っ張られる=トーアウト傾向

では、車高を下げた場合ですとどうなるでしょう。右図を参考にしてください。

タイロッドは両肩上がりの状態になります。



この様なセッティングに変更された車の場合はどの様な現象が起きるかといいますと。

●(同じく仮に。)右コーナーリング時、左にロールした場合 →左側のサスペンションが縮む。右側は伸びる。
右のタイロッド= 突っ張る = トーイン傾向 (イン側)
左のタイロッド=引っ張られる=トーアウト傾向 (アウト側)

●直進時、ギャップなどで車体が沈み込んだ場合 →両側のサスペンションが縮む。
右のタイロッド=引っ張られる=トーアウト傾向 
左のタイロッド=引っ張られる=トーアウト傾向

●直進時、バンプした直後など車体が浮き上がった場合 →両側のサスペンションが伸びる。
右のタイロッド=突っ張る=トーイン傾向 
左のタイロッド=突っ張る=トーイン傾向
実際の車両ではこのタイロッドの水平具合は上記のような現象を想定してロールによる理想的なアライメント変化を起こさせるために微妙に水平からずれた状態に設定されています。

ところがこれが無作為に車高を下げた場合、タイロッドの傾きが設定値と違うため本来の思惑とは異なったアライメント変化を発生させてしまい、操縦性に違和感を生じさせてしまうわけです。


私が以前、車高を下げた場合に対応するパーツを装着して愛車の車高を下げていた話を冒頭でいたしましたが、それは上記現象を解消するためのサイズ違いのタイロッドエンドです。
車高が下がった分だけエンド部の高さを増やしたものでタイロッドの水平具合(傾き)をオリジナル車高と同じにするためのパーツでした。
私が上記、対策品のタイロッドエンドを装着していた車両は91年式ユーノスロードスターでマツダから純正部品としてこのタイロッドエンドは販売されていました。
ちなみに装着していた強化スプリング&ダンパーはノーマル形状のモノで車高はオリジナルより20mm弱ダウンでした。

<参考>右写真は某日産車用ですが上が低車高用、下がノーマル車高用のタイロッドエンドです。
その効用は? 右の図を参考にしてください。

この様にしてやれば、走行中のサスペンションの動きに対するアライメント変化はオリジナル車高の時と同様のものとなります。

サスペンションを強化品に交換した後、オリジナルのタイロッドエンドのままサーキット走行をした時は、非常に操縦感覚に違和感があり、とても走りづらかったのを今でも覚えています。
この辺りのことに詳しい方(某ドライビングスクール講師)からアドバイスをいただき、この背の高いタイロッドエンドを装着して本来のタイロッドの傾きに戻してやってからの走行ではとてもコントロールがしやすくなりました。
この違いは実際に体験してみないと言葉だけではわからないかもしれませんが非常に体感上大きなものでした。


「総括」
1・2cmの若干のローダウン&低速走行であればさほど気にならないことかもしれませんが最近のノーマルストラット流用のダウンスプリングというのは平気で4cm5cm下がっていますよね。
静止状態のアライメントはオリジナルと同じように調整していて大丈夫なはずなのに、実際走行してみるとどうも走りにくくてトホホだという人の話も耳にすることがあります。
あるいは、ローダウンした車というのはこういうもんだと勝手に理解して危険な状態の車両でワインディングを攻めている人も多いかもしれません。セッティングが破綻した車はどんな腕前の人でも乗りこなすことは難しくなおかつ危険です。

サーキット走行のために車高調整式サスペンションを装着してサーキットを走ってる方も身近におられます。しかしけっして5cmなんて大幅な車高ダウンは操縦性を損なうので行っていないですよ。
(純粋なレースカーの場合は車体外観は市販車と同じでもサスペンション全体を低車高状態に合わせた仕様のものに交換しているからペッタンペッタンに車高を落としても大丈夫。
クリオ2/RS/カップカーのサスペンションはどんなパーツが使われているのか興味が湧きますね〜。)


見た目のかっこよさに惹かれて、あるいは低けりゃ低いほど速く走れると錯覚して過剰な車高ダウンを行っている方は一度この辺りを見直してみると良いかもしれません。
極端な車高ダウンによりほとんど操縦性の破綻した状態になってしまった車を運転させていただいたこともありますが、やはり度が過ぎていると単なる危険車両・危険行為に思えました。
その状態が気に入ってるオーナーさんには何も言えませんでしたが・・・。
(バネレートが高いスプリングでしたので確かに転舵初期の応答はノーマルよりクイックでしたから)
オリジナルの状態では難なく走れる道をオリジナルより高度なテクニック(ビビリながら非常に繊細な操作をして)を駆使しないと危なくて走れないというような。。。なんと言えば適切な表現になるでしょうか。この辺りはお読みいただいている皆様の想像にお任せしたいと思います。


ということで、前回の「タイヤホイール試着実験」に続いて、見た目をとるか?実質をとるか?的な話になってしまいましたね。
さてあなたはどっちをとりますか?どっちでもいいですよ。ただし自己責任でネ。^^

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