ブレーキ鳴き止め処置 ('04.06.04.)
今回は知人のカングーでの作業です。 この車両は2002年式1.4L/AT(正規モノ)。
クリープのみで車が微速で動いている時に、ごくごく軽くブレーキペダルを踏むとフロントブレーキから「ヒー」と音がするとの事でしたので、その症状を解消する処置を施しました。(俗に言う「引きずり音」ですな。)
昔はどこの整備工場でも普通に行っていた作業ですが、←オマエの歳はいったいいくつやねん!!? とツッコマレそうですな。(爆)
ネット上の掲示板などに書き込まれた内容を見て、あきらめてたり我慢してるオーナーさんも多いようですね。
> 投稿者:○◇△ タイトル:Re:「ブレーキの鳴きについて」
> オレも車両購入先で 「こんなもんです。欧州車のブレーキは鳴いて当然ですよ。」と言われたぞ。
> ブレーキの音なんか気にするなら国産車に乗ってろ! バカ!
とかいうアレです。 …困ったもんだ。。。(ーー;
あのぉ〜〜、欧州車だからって国産車と同じ自動車、そんな妙な性質は無いと思うのですが。。。
そうなりやすい傾向にある部品(ブレーキ部の)を使っているということはあるでしょうが。
そういう症状が出たならそれなりの処置を施してやればいいだけだと私は思う。。。思う。思う。。。。。
たしかに最近のシステム化された「整備内容と整備料金との関係」の支配する世界では、なんとも仕事を引き受けにくいジャンルの作業だと思います。
どういうことかと言いますと、これからレポートする作業内容をご覧いただければ勘のいい方ならすぐわかると思うのですが、部品交換などのように「はっきりとこう」と作業と価格との関係を決めにくい地味な作業なのです。
従ってシステム化された中で仕事をしている立場の方にとっては
・保証期間内なら「クレーム修理扱いでで新品ブレーキパッドへ無償交換」
・保証期間が過ぎていれば「有償で新品ブレーキパッドへ交換」あるいはオーナーさんに「我慢してください」
という対応をするのが事務処理上一番妥当な線なのではないだろうか?と私は感じております。←私は自動車整備業界の人間ではないのであくまで想像でですが。
ということで、いつまでもうんちくを語っていてもしかたがないので作業レポートに進みます。(笑)
まずは必要な工具類を用意します。 ・ブレーキクリーナー ・ブレーキ(パッド)グリス ・ヤスリ ・13mmレンチ(ソケットかメガネ。 スパナはダメよ) 意外かもしれませんがたったこれだけです。 用意できたら車両をジャッキアップしてフロントタイヤを外します。 ちゃんと馬はかませましょう。ジャッキはあまり信用できません。 毎度毎度こういうグロテスク・スプラッタなことを書きますが、これは貴方が車の下敷きになって人生の幕を閉じていただきたくはない!と思う私の老婆心でございます。 |
それでは気分をとり直して作業にかかりましょう。(爆) キャリパーの裏側・下端部にある13mm頭のボルトを取り外します。 この時、スライドシャフト基部共回り防止ワッシャもいっしょに外します。ボルト共々無くさないようにしましょう。 |
そして、キャリパーの上端部ボルトを支点にクルリとキャリパーを上に起こします。 パッドが露出しましたね。 続いてパッドを取り出します。 バッドは上端部に位置決め用のバネがついていてテンションがかかっていますので、下から上向きに力を加えながらスライドレール?溝?に沿って引っ張り出します。 インサイド側パッドも同様です。 |
取り外したパッドです。 インサイド側のリーディングエッジ部分にダストが堆積しまくっていますね。 これは右前輪のパッドですが、左前輪はもっと強烈でした。(音も左からの方が大きく耳障りだったとのこと。オーナー氏談) このリーディングエッジ部分がバリ状になってきて回転するローターとかすかに触れることにより「ヒー音」が発生するというのが今回の症状の主な原因でございます。 (リーディングエッジという表現は、車両が前進走行している時の回転方向に対しての最先端部という意味で使っております。 リーディングエッジの反対は、トレーリングエッジ=追従側角? ですな。) |
パッドに付着したダストをブレーキクリーナーでブシューーして落とします。 こびりついている場合はワイヤーブラシなどでこそぎ落とします。 そしてリーディングエッジ(赤で示した辺り)をヤスリで雌鳥…チガウ! 面取りします。 その他のエッジも軽くヤスリをあてておいてギタギタになってる部分があればそこそこでいいので均して(ならして)おきます。 インサイド側パッドも同様の処置を施します。 |
続いてパッドガイド部の掃除をします。 パッドが挟まっていたレールになっている部分です。 ここをレールのように使ってブレーキパッドが圧着・解放の動きをしている部分ですので錆びついていたりダストが堆積していたりするとブレーキペダルフィーリングにも良くない影響を与えますのでキレイにお掃除。 この車両の場合パッド側がけっこう錆びていて写真に写っている右側アウトサイドは固着しかかっていたのかパッドを外すときに外すというよりは剥がすという感触でした。 そのせいかパッドの減り具合も右左で違っていて 右前輪は残・約5mm。左前輪は残・約3mm。でございました。 もしかしたら右は実際固着していてパッド全体が均一にローターに圧着されず、ピストンが押す力により“パッドが、しなって”ローターに圧着されていたのかもしれませんねえ。 真偽の程は定かではありませんが。。。 |
まだ作業途中ですが、おまけ画像。 純正パッドの座金の裏側には薄い金属板がカシメ止めてあります。 これは鳴き止め板です。 ディスクブレーキのパッドは、キャリパーのピストンの周囲のシールゴムの作用によってブレーキペダルを放すと軽くローターから離れる程度に戻るのですが、若干は引きずっている状態で走行しています。 その際、生じる音=振動をこの鳴き止め板が減衰してキャリパー等へ振動が伝わりにくくすることで音が共鳴して大きくならない(聞こえない)ようにする役目をしております。 |
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実際の所、音が聞こえるか聞こえないかの差だけでどんなディスクブレーキでも引きずりによる摩擦音はしているのであります。 ところがですね、この鳴き止め板があるがためにブレーキのペダルタッチが多少悪化することは免れません。 もし純正パッドがカックンブレーキに感じるならば、社外品の鳴き止め板がついていないパッドに交換するのも手ですな。 私の常套手段でござる。 ステンメッシュのシリコンブレーキホースより安いし簡単。^^; |
さてと、それでは組み付け作業に戻ります。 ブレーキパッドの両端=先程清掃したレール?と触れる部分 をキレイに拭き拭きして、そこへパッドグリスを塗ります。上端側・下端側ともに。 これをしておくとブレーキをかけたり緩めたりする時のパッドの動きがスムーズになりブレーキペダルタッチが気持ちよくなります。 そしてガツンと素早い制動をかけたときに希に出る「ガゴッ音」の予防になります。 そうそう、キャリパーがパッドを押している部分(当たり面)にも極薄く塗っておくといいでしょう。(インサイド・アウトサイド側パッド両方共) パッドの裏側にくっきり跡が残っているので塗る範囲は簡単にわかります。 これは何の為かといいますと、先程の鳴き止め板と同じ役目。グリスが音・振動を減衰してくれることを期待してのことです。 |
あとは、パッドを元通りパッドガイドに収め、キャリパーを元の位置に戻し、共回り防止ワッシャを装着して固定ボルトを元通り締めるだけで完了。 新品のパッドに交換するわけではないので、キャリパーピストンを押し込む必要もありません。 ただし念のため、作業完了後〜走行前にブレーキペダルを何度か踏み込んでちゃんとパッドがローターを圧着しているかどうかは確認しましょう。 もし万が一パッドとローターが離れていたら…、そのまま走行するとブレーキが効かずに事故につながりますので。 <注意> このページを参考に作業される場合は100%ご自身の責任のもと行ってください。 当方はトラブル・事故などが発生しても一切関知いたしません。 <作業後インプレ(代筆)>(笑) オーナーさん、喜んでおられました。 「ヒー音」がしなくなった。ペダルフィールが良くなってブレーキングの微調整がしやすくなった。と。^^ 以上、年寄りの自慢話に長い間つきあってくださってありがとうございました。(爆) |